~おとしものがたり~

私の「おとしもの箱…」

「 強く握られた拳 」

世界を呪って
死んでいく人がいる

世界を憎んで
死んでいく人がいる

世界に笑顔を見せて
死んでいく人がいる

世界に光を残して
死んでいく人がいる

強く握った拳のやり場を探している
その拳の行く末が
きっとそこにつながっている

その人の悲しみや苦しみの闘いを
私は知らない

 

 

 

「 和國神話 」

神すらも 万能ではなく

どんなものにも 宿りて
八百万の神々が お生まれなさった

火の神は 水の神にはなれず
水の神は 火の神になれぬ

土に雷 雨に風
無数におられる神々も

またこれに同じ

調和の和 和を以て 貴しとなす
もえいずる 太陽の國 

日の丸 「にほん」

 

 

 

「ひとりの家路」

街は暗くなり
気だるさにさいなまれるなかで

大切なものは目に見えない

目に見えるもので
確かなものはあまりない

月明かりはそれを知っている
風景に溶け込むように優しく私を照らし
目を閉じて夜道を歩く

耳を澄まして
靴音に紛れる鼓動が生きている証

ゆらゆらと漂う家路
ボ~ン パン
季節はずれの花火の音がする

 

 

 

《 別夜悲 》

窓の外には見慣れない景色

漂う空気の香りは どこかよそよそしく

月明かりの夜道にくり出す

丸い丸い 純白の月だけが

いつも わたしを知っている

わたしは今 この場所で

何かを待っている

会いたい気持ちと 

会えない気持ち

夜空だけがわかってくれる

急に降り出した雨が

わたしの頬をつたう

 

 

 

「 野良猫と夜の街 」

深夜の空気は どこか新鮮で 澄んでいる

人の息遣いの無い街を 一人歩く

誰もいない 孤独な世界が

僕を癒やす

一匹の野良猫が 唯一の友人

何を交わすわけでもない

静かな時間

少しの雨も

許してしまえる

小さなぬくもり